冷笑主義 web拍手

No4. 口は災いのもと




第1話 「暗黒都市の番犬」 序盤の「大丈夫だ。幸い私は良い医者を何人も知っている」後。


「それはそれは安心致しました」
 パルティータが棒読みでにっこり笑い部屋を後にしようとすると、
「…………」
何故かユニヴェールも付いてきた。
「何ですか?」
 眉をひそめて振り返ると、吸血鬼がしれっと肩をすくめてくる。
「お茶をもら──」
「本の整理は」
「……お茶飲んだ後で」
「ダメです」
「何故」
「お茶を飲んだ後、貴方のヤル気は完全になくなっています」
──というか、この男はすでに飽きている。
あれだけ“整理”だと言い張っておいて。
「どうするんですか、この有様広げた本」
 パルティータはびしっと部屋の中を指差し、ユニヴェールがつられてそちらに視線をやった瞬間、
「おい!?」
彼の背中を押した。
 そして扉を閉める。
 おまけに外から鍵をかける。
「紳士は一度言ったことはやり遂げませんと。きちんと片付けたら呼び鈴でお呼びくださいませ。美味しいお茶をご用意致しますから」
 放蕩貴族は自分を甘やかしすぎていけない。
「パルティータ、私はこんな扉くらい簡単に蹴破れるんだが」
「蹴破ったらご自分で直して下さいね」
「…………」


THE END


Menu   Home



Copyright(C)2007 Fuji-Kaori all rights reserved.